急ぎすぎ

 オリンピック代表の走行試合、ニュージーランド戦は1-1のドロー。ちょっと本戦に不安しか残らない試合でしたね。失点シーンの村松は確かにお粗末ではあったけど、本番でなければいいんです。練習での失敗を試合に生かせば良いだけ。あくまで本番はオリンピックなんですから。ただ、それ以上にチームとしての狙いがどうなのって思いますよね、このチームは。
 特に問題なのが、あれだけポゼッションしつつ、シュートをあられのように打ちながら1点しか取れなかった攻撃です。シュートに関しては、まぁ入らない日もあるからそれはしょうがないんだけど、タテに急ぎすぎる。確かに迫力はあるけど、常にトップスピードって印象の単調な攻め。当たり前の話ですが、“速い”ってことはボールコントロールが難しくなるわけで。ドリブルだけじゃなくてパスも、トラップも同じ。1本目のパスは成功しても、スピードに乗った状況でのパスが続けば、2本目、3本目とパスの本数に比例して、パスのズレも大きくなり、肝心のフィニッシュの場面でミスが出るという状況に陥りかねないわけです。U-23代表チームは、常にそういう状況を自分たちで作りだしながらプレーをしているように見えました。フル代表という良い見本があるのだから、緩急のパスで相手を動かしてDFに穴を空けて攻略するやり方があってよいと思うのだけど、そういうイメージはないっぽいですよね。
 そのタテに速い攻撃に拍車をかけていたのが永井のドリブルだったと思います。速さもキレもあり、まさに“切り裂く”ようなドリブルで何度かチャンスを作った永井ですが、そのダイナミックな突破故に、チームのイケイケな雰囲気を助長させてしまったように見えました。永井が悪いわけじゃなくて、サイドで自分の武器を生かそうと思ったどうしたってそうなるけどね。やっぱりタテに速い攻めってのが監督の理想なのかね。川崎F時代のように。U-23には中村の代わりはいないと思うのだけど、どうも狙いが中途半端というか…。
 攻めに人数をかけるチームだし、選手たちのプレースタイルを考えてもコンビネーションをベースに、その中に個人技を組み込んでいくスタイルに取り組んでいるようにも見えますが、トップスピードで3本以上のパスが絡むコンビネーションて、ミスが増えるという上記の理由で無理じゃねーかなって思うんですよね。2本でも難しいと思うけど。でもこのチームは、ピッチを広く使うわけでもないのに、人数をかけてタテに急ぐ。タメを作って後方の上がりを引き出してっていうシーンは意外と少なかった気はします。そもそもこのチームにコンビネーションてあってないというか。清武と東にはそれを感じるけど、ほかの選手たちはその場の即興コンビネーションみたいな。その場のアイデア重視で動きが整理されてない気はします。選手選考によりリセットされたというより、予選のころからコンビネーションは感じさせませんでしたけど。
 そんなチームでありながら、ゴールに迫るシーンを何度も作りだせたのは、ひとえにニュージーランド守備陣のルーズさでしょう。最後の場面でこそ身体を張るものの、中盤はわりとルーズでしたね、ニュージーランド。シュートの場面を除いて日本の攻撃陣は割と自由にプレーをさせてもらえました。守備に人数をかけてカウンターってほど割り切ってもいなかったたし。だから日本の攻めがハマったのだと思います。でもこれって本戦じゃムリだよなぁって思うんです。中盤で自由にさせてもらえることなんてないだろうし、そもそもあんなに圧倒的にボールキープできるなんて思えないし、ボールキープできなくなれば攻められるわけだけど、トゥーロンで課題となった守備の安定を計るゲームにはならなかったわけだから。徳永はうまくフィットしていたけど、中盤より前の守備はどうなんだろうね。その辺はスペイン前の2試合?で見てみたいところです。
 あと気になったのは杉本かなぁ。貴重な1点を挙げたけど、組み立てに参加しすぎて肝心の場面でゴール前にいないシーンが何度か。高さを生かしたプレーもなかったし、やっぱりチームとして彼の良さを生かすための動きが整理されていない気もします。後になって「やっぱり大迫のほうが良かったなぁ」なんて言われないように、本人はもちろん、監督・コーチ陣も攻撃時の動きを整理してほしいですね。