Jリーグの経験を力に変えて

 オリンピック準決勝、メキシコ戦。残念ながら男女同時優勝という偉業の可能性は消えてしまいましたが、まだ3位決定戦が残っています。しっかり切り替えて是が非でもメダルを持ち帰って欲しいところ。…でもね、正直厳しいかなぁと思ってしまうのです。
 大会前の大方の予想を覆し快進撃を続けたU-23代表ですが、その要因は守備の安定とカウンターでした。特に多くのサッカーファン・評論家が読み間違えたのが守備の安定ですね。トゥーロンでの惨敗を受けOAに吉田・徳永を加えたとはいえ、これほど効果的な守備組織を短期間で作り上げることができるとはほとんどの人が思っていなかったのではないでしょうか。初戦がスペインだったこともあり、「まずは守備から」という意識で大会に入ったことで、前線のタレントが守備に走り回り、コンパクトなブロックでPAへの侵入を許さず、ハイボールもしっかりと跳ね返す、というプランをチーム全員で実行できたこと。しかもスペインから勝利をもぎ取ったことで得た成功体験が、今大会におけるチームの方針を固めたといえるのではないでしょうか。
 で、今回のU-23の前評判が低かった理由は守備の危うさのほかにもう一つありました。攻撃時のバリエーションの少なさ、というか自分たちがボールを持ったときに効果的な攻撃が仕掛けられないってことです。ボールを持たされると得点の気配がしないチームだったんですよね。幸いなことにエジプト戦までは、それが顕在化することはありませんでした。4試合中2試合はカウンターで早い時間に先制点が入ってたし、ホンジュラス戦は前線入れ替えてたというエクスキューズも合ったしね。唯一モロッコ戦が怪しかったわけですが、終盤のスーパーカウンターで勝っちゃったからね。ところがメキシコがリードを奪ったことにより守備重視の戦い方になったため、日本がボールを持たされることになり、今まで隠れていた攻撃バリエーションのなさという弱みが噴出してしまったという格好です。“どうやって相手守備を崩すか”という意思統一が図れていないわけです。
 これは予選の頃から言われていたことで、大会直前の壮行試合・準備試合でもその傾向は変わりませんでした。実際、今大会では遅攻で相手のPAに侵入したのは右サイドから2、3回程度サイドを抉っただけだと思います。シュートもPA外からが多かったですね。とにかくタテに速い攻撃をしたがるチームで、今考えれば関塚監督はその攻め方以外考えていなかったのかもしれませんね。確かにそれで川崎Fで成功を収めてはいますけど。前で納められる大迫を選考しなかったのも、本大会では速攻1本に掛けていたからなのかもしれません。ただ、交代で入った3選手がまったく機能しなかったことも含めて、もう少し準備はしておくべきだったかなぁと、どうしても思ってしまいます。もちろん中2日での5戦目ということで選手の疲労もあっただろうし、日本の選手たちの動きが重かったというエクスキューズはありますが、とても残念な敗戦でした。
 で、3位決定戦ですよ。相手は韓国。ぶっちゃけ1試合も見てないんですが、韓国がボールをキープするサッカーをするとは思えない。どう考えたって日本がボールを持たされる展開になると思うのです。準決勝で3失点したとはいえ、そこまでの4戦で2失点。決して守備が弱いチームではありません。日本代表は当然のように苦戦が予想されるわけですが、たとえ攻撃時のコンビネーションが未成熟であったとしても、彼らはJリーグにおいてさまざまなシチュエーションを見て、経験してきた選手たちです。Jリーガーとしての経験地をフル動員して、勝利に結び付けて欲しいと思います。