強いじゃないかブルガリア

 W杯出場をかけた対オーストラリア戦を控え、スケジューリングされたブルアリア戦。0-2の完敗でした。開始早々の失点が痛かったですね。もう1回蹴れと言われたって蹴れない類のシュートが出会い頭で来ちゃいました。以降、ブルガリアは守備重視でカウンターを徹底。日本代表の前線にボールが入れば、がっつり身体を当ててくるし、フィニッシュの場面でも足は伸びてくるし、カウンターに入れば「やり切る!」って意思をみなぎらせてサイド突破→クロスって感じで、シンプルゆえに力強いというか。皮肉にも会見でザックが口にした「インテンシティ」は明らかにブルガリアの方が勝っていました。いやぁ、良いトレーニングになったと思います。オーストラリアを想定したコンタクトも体験できたし、反省ばかりが残る試合で、本番に向けて気持ちも入れなおしてくるだろうし。最近多い反ザック派には絶好の口撃の機会を与えてしまったわけですが、擁護できることもいろいろあると思うんです。ということで殴り書き。
 このブルガリア戦は基本的にはオーストラリア戦を見据えたものです。3-4-3のテストも、ザックジャパンのオプション確立ではなく、あくまでもオーストラリア戦に備えたもの。前半の布陣も、後半の布陣も、選手交代も、すべてオーストラリア戦で勝つためのものであり、ブルガリアという目の前の相手を倒すためのものではないんです、ザッケローニの場合は。まぁ、その上で勝てってザックも思ってるはずですが。ジーコは目の前の勝利を渇望してましたねぇ。
 で、3-4-3ですが、基本的には本田不在を受けてのものだと思われます。現時点でのベスメンはGK川島、DF長友・今野・吉田・内田、MF遠藤・長谷部・香川・本田・岡崎、FW前田ってところだと思います。フィールドプレイヤーの中で身長180以上は吉田・長谷部・本田・前田の4人。オーストラリアの武器はフィジカルなわけで、本田が一人抜けるだけでも相当きつくなります。いや、普通に流れの中でプレーしている分には高さの影響はそんなにないと思いますが、問題はセットプレーです。ケーヒルケネディに加えて、上がってくるニール、ノースらを抑えるためにも高さは不可欠。そこでCBに栗原を加えた3バックが試されたのではないでしょうか。4バックで内田の変わりに酒井を入れる方法もあるんですが、それは後半に試されましたね。おそらくリーグ終盤をケガで欠場した吉田のテスト的な意味合いもあったのだと思われます。吉田がムリなら栗原が代役になりますからね。今野-吉田の関係は既に確立しているし、4バックで酒井を試すなら栗原とセットでって考えがあったのでしょう。
 3-4-3は選手たちも手応えを口にしていたように、良い部分もありましたが、改善が必要な部分もありました。一つは吉田と内田の関係。吉田がどうしても中に絞り気味なので、背後のスペースをケアするために内田が下がっちゃうんですよね。右サイドで今野がサイドをフォローすることで駒野を押し出していたのとは対称的でした。また、このチームは左からの攻撃が得意なためか、左に人数が集める傾向があって、右で内田がボールを持った時に孤立するシーンも目立ったように思います。内田は一人で何かするタイプじゃないので、周りの選手が顔を出して選択肢を増やしてあげたいところなんですけど。かと思えば乾が外に張りすぎて蓋になってたりして。乾はザックに「中に入りすぎるな」って怒られていたみたいですけど…。この辺の関係性はもっと時間が必要なんだろうなと。
 もう一つ気になったのは、ポゼッション時の栗原が空気すぎること。遠藤と栗原が重なることが多くて、栗原意味無いじゃーんって見てました。遠藤もそこは栗原を信頼してあげて、もっと前でボールを受けろよってね。最後尾で人が余ると前線に人数が足りなくなるので。人数足らなくて距離感が悪いシーンも多かったと思います。そういう信頼関係が構築できてないのかなってシーンは他にもありましたよ。香川が隙間で欲しがっているのにパスを出さなかったりね。勇気をもってパスを出そうぜって話ですよ。
 ということで、前半は180以上が栗原・吉田・長谷部・前田の4人です。で、後半はいつもの4-2-3-1に変更。後半開始と同時に選手を4人入れ替えます(駒野→長友、内田→酒井、吉田→清武、前田→ハーフナー)。180以上は栗原、酒井、長谷部、前田の4人です。これで高さを担保しつつ、香川・乾・清武+ハーフナーのアタッカー陣のテストをしました。まぁ、微妙でしたね。特に2列目の三人はカウンター気味の展開ならその技巧とスピードを生かせそうですが、しっかり守備組織を構築した相手に対する場合は+αが必要になりそうです。ハーフナーの高さを生かしたいところなんですけどね。後半はサイド攻撃も不発でした。本田がいないと中で起点が作れないから、不在時は外をどう崩すかが大事なんだけど、どうもコンビネーションがよろしくない。長友はコンディションの問題があるのか上がりは控えめだったし、酒井もセットされた守備と相性が良くないのか、最大の武器であるクロスがほとんど入れられませんでした。長谷部・遠藤が攻撃に絡めなかったこともあると思うし、清武のコンディションもどうも悪い。まぁ、本番は6月4日、そしてコンフェデなので、意図的に落としているところもあるのかもしれません。
 ということで内容的には完敗といっていい試合でしたが、失点は超FKとオウンゴールだし、6月4日の本番は、守備に関しては改めて集中して臨んでもらえればそれほど問題にはならないかと。問題は攻撃陣。3-4-3は守備が未整備の部分が多いみたいだし、本田不在なら4-2-3-1で外のコンビネーションを大事にしたいところ。であればパスを出せて人を使える分、右SBは内田の方が良いと思うんだけど、そうすると高さの問題が出てくる。ジレンマだねぇ。酒井なら遠藤を右ボランチにして右にパスの起点を作って酒井を前に出すのが基本形になるのか。左は長友がいれば何とかなりそう。ということでオーストラリア戦は4バックと予想です。
 予断ですが、相手がオーストラリアじゃなくて、高さに気を使う必要がない相手であれば3-4-3の右CBは内田でもいいかもって思いましたw パス出せるし、SBとしても振る舞えるしね。今野―吉田―内田なら3人ともボールを裁けるので、遠藤・長谷部を前に出せるし。3バックはもう少し時間があれば面白くなりそうなんだけどなぁ。足元のあるCBが欲しいところですねぇ。森脇・槙野にもう少し守備力がついてくれば選択肢としては良さそうなんですが。2人のこれからの成長に、そして6月4日のオーストラリア戦本番の日本代表に期待です。