山田直輝の駄々っ子

 Jリーグは10試合が終了。レッズはまたも勝てずに勝点8の16位。「攻撃的に行く」というペトロビッチ監督の言葉とは裏腹に、ぱっとしない試合をしてスコアレスドローだったわけなんですけど、この試合の一番の見所はレッズが最もゴールに近づいた直後、押し込むだけのシーンでボールに触れなかった山田直輝でした。仰向けに寝転んで両手で地面を叩く姿は駄々っ子そのもの。だけど本気で悔しがっているその姿に思わずぐっと来てしまった。
 先日のナビスコ杯で10分くらいプレーしたとはいえリーグ戦は今期初出場。山田直輝の特徴は高い基礎技術と豊富な運動量に加えて、時に大きく、時に細かく動きながらスペースを作ったり、味方のマークを引き剥がしたりと、ボールタッチの有無に関わらず、チームにリズムをもたらせること、だと個人的には思っている。ところがペトロビッチが志向するサッカーは攻守においてポジションを固定し、個人による局面打開を重視したサッカーであり、直輝のプレースタイルとは合わない。広島戦も右アタッカーの位置に入ってすごく窮屈そうにプレーをしていて、ちょっとかわいそうになった。それでも、逆サイドが崩せそうな時には、あの小さい身体でフィニッシャーの役割をまっとうすべくゴール前への走り込む動きは欠かさなかったし、駄々っ子のシーンもそういう姿勢から生まれたもの。チームのために今何が必要かというのを、常に考えて実行できる選手なんだよね。思えば2009年のデビューシーズン。サイドで味方がボールを持つと、中央からその味方の外をグルッと回ってタッチライン際を走る直輝を何度も見た。ただ上手いだけじゃない、労を厭わず、必要ならば何度でも走るその姿勢こそが、サポーターに愛される所以なんだろうと思う。
 そんな山田直輝のプレースタイルについて、ペトロビッチは直輝の何度かネガティブな発言をしているし、すでにケガが直っており、トレーニングマッチでよいプレーを見せていたにも関わらず、直輝をベンチに座らせ、時にはベンチ外にすることもあった。
 選手からしたらコレはキツイと思うよ。年代別代表に名を連ね、将来を嘱望され、Aマッチにも出場している。周囲からの期待も嫌というほど自覚していながら、ケガの影響で昨年は満足にプレーできなかっただけに今年にかける気持ちも大きいはず。同期の高橋や原口がレギュラーとして十分すぎる活躍をし、濱田も五輪代表レギュラーの座を掴み、自分だけが出遅れている状況にふがいなさも感じているだろう。自分のプレーとチームのスタイルとの間にフラストレーションを抱えていることも想像できる。監督にプレースタイルを否定されつつもようやく掴んだチャンスだっただけに、ものすごく悔しかっただろうし、その気持ちがすごく伝わってきた。現地で見てたら泣いてたかもしれない。
 試合に関しては、点が取れなかったこと以外はペトロビッチ的には完璧だったんじゃないだろうか。ようやくペトロビッチサッカーの完成形をイメージすることが出来た。もう、ものすごいポジション固定。たぶん後ろの選手が前の選手を追い越すシーンは1度もなかった(サイドでパス交換をしながら位置を入れ替える程度はあった。スピードに乗って追い越すことはなかったけどね)。6バックともいえるような布陣を引いて広島攻撃をストップ、攻めは前の4人+SB1人でやりきる。選手交代は前の選手のみ、同じ役割を持った選手を入れ替えるだけ。1トップか2トップかで変わるけど、アタッカー4人と考えるとベンチメンバーはモチベーション維持が大変だろうな。良いプレーしてたって代えられちゃうんだから。柏木しかり、田中達也しかり、広島DFは嫌がっているようにも見えたんだけど…。1トップなら中央はエジミウソン、左原口ははずせない。右はSBの高橋を生かすことを考えたら中でプレーできるタイプ、今はマルシオがやってるけど、他にできる選手はいないか。トップ下、昨日は柏木だったけど、ボールを引き出す動き、個人での仕掛けを考えると田中達也がいい気がする。マルシオと達也が入れ替わりながらやると良い感じ? 柏木と山田直輝は、正直、ペトロビッチには合わないよね。本人のことを考えたら、すごく悲しいことではあるけれどこの夏に移籍をしたほうがいい。柏木は広島に出戻りでもいいじゃん、直輝は乾が抜けそうなセレッソとかいいかもしれない。2トップでやるにしても、今のスタイルを続けるなら、高崎、マゾーラ、原、エスクデロの方があってるよ。宇賀神や高橋を前で使ってもいい。ボランチは上がる必要がないんだから山田、鈴木、青山の3人で回す。時々小島君を使って経験つませてもいい。でも山田・柏木は絶望的なまでに合わない。何とかしてあげたいんだけどなぁ…。