久々すぎる更新。話題はもちろん今季の浦和レッズ。第12節終了時点で7勝2分3敗、勝点23の2位。出だしは上々かと思われます。今シーズン、なんとなくではありますが一応浦和の試合は全部見ているので、その感想、というか印象を。

 まず守備意識の高さ。これはスカパーの中継でも再三いわれているんですが、昨シーズンの失点数の多さ、特に終盤はひどくてACL出場圏すらも逃してしまった。ということで今年は守備意識が高いですね。槙野が無闇に上がらないとかも含めてw。まず高い位置でボールを奪いに行くときと、下がって体制を整えるとき、このメリハリが利くようになったなぁと。高い位置で奪ってショートカウンターって美しいと思います。個人的にはこれが一番好きです。ドルトムントみたいな感じ。ブッフバルト1年目はこれが見事だった気がする。エメルソン、田中達也、永井、山瀬らによるハイスピードショートカウンター。懐かしいなぁ。でも今年の浦和で感心しているのはむしろ守備ブロックを作ったときの守り方で、去年は2シャドーの守備時の位置取りがあやふやだったというか、よく言えば臨機応変、悪く言えば守備にムラがあるイメージでした。でも今年はきれいな5-4ラインを作って守るようになりました。中盤左から原口-阿部-柏木-コオロキの4人で5バックの前にきれいなラインを作り、守備ブロックを構築するんです。昨年はそんなの全然見られませんでしたから、大きな進歩ではないかと。ただ、その分原口・コオロキの位置が低くなるので、2人の負担が増えているのは事実だと思います。特にコオロキはポジションが1列下がって、1トップだった昨年と役割が異なるので、ちょっと存在感出せてないなぁと思っていたのですが、10節の横浜FM戦ではすごく効いていました。このまま調子を上げていって欲しいです。原口も守備がんばってますね。体を張るようになったし、粘り強く人に喰らいついて守備をしている。これをこの先も続けて欲しいなぁと思います。

 攻撃面の印象としては、両ワイドを使うロングパスがすごく増えました。カウンター時はもちろんですが、細かくパスを回して逆サイドをフリーにしてからロングパスみたいな。ただその前提として、中央でのコンビネーションが成熟してきたことも忘れてはいけない。密集した狭い局面を前3人が中心となり打開できるようになった。昨年より両ワイドが内側に入ってくるケースも増えていて、守備固められても崩せるという実績を残せるようになってきたというか。中を崩せるからこそ外が生きるわけですよね。相手守備を中に集めてサイドにパス。意識を引きつけたうえで逆サイドへ。良い流れです。

 一方で特に槙野が攻撃をかなり自粛しているので、攻撃に厚みが出ないケースが多くなってるなぁって印象もあります。去年は原口・宇賀神・槙野の3人による左サイドの崩しはかなり武器になっていたし、槙野って中向きでボールを持ちながら右足での軽いキックフェイントで縦に持ち出す成功率が高い印象なんですよね。悪くいうと槙野のお決まりパターンなんだけど、相手DFからすると、周辺に味方が多いからクロス・ショートパス・ワンツー抜け出しを警戒しつつなので、後手を踏むケースが多いようです。まぁ今年はそういうプレーも少なめです。逆サイドの森脇はガンガン行くというよりはビルドアップ中心で、攻撃に関与する時もドリブル突破ってよりは右ワイドのフォローに入って数的有利を作るようなプレーが多いですが、今年は左サイドもそれに近い印象ですね。

 また、FC東京戦だったと思うんですが、槙野がケガで欠場した試合では、フォーメーションがいつもと違う動きをしていました。通常は、基本フォメ3-4-2-1で守備時はワイドがDFラインに入り、2シャドーが相手SBをケアする5-4-1、攻撃時はワイドが最前線へ、ボランチが1人CBに入りCBの両サイドがSBの位置取りをする4-1-5になります。FC東京戦では槙野の位置に永田が入りました。守備はいつも通りの5-4-1でやっていましたが、攻撃時の動き方がいつもと違う2パターンで、1つ目は阿部がいつものCBではなく左SBの位置に下がり、CBは那須と永田、右SBに森脇が入るパターン。永田と阿部の特性を鑑みて、SBに阿部が入った方が良いという判断なのだと思います。永田スピードないし、永田より阿部の方がSB適性が高いってことなんでしょう。2つ目はCBに那須と永田は1つ目と同じ。違うのは宇賀神がSBの位置に入って左ワイドに原口、シャドーの位置にボランチの柏木が上がり、普段CBの位置に下がる阿部がボランチに残り4-1-5の真ん中、1の位置に入るパターン。この2つの使い分けが上手くいっていたわけでもないし、宇賀神の位置取りが中途半端って解説の人(誰だったか失念)も言っていたように、どっちのパターンもそれほど効果的ではありませんでした。が、パターン化されて久しいペトロビッチスタイルに進化の方向性が見えたなぁと思いました。

 パターン化されているのは今やJリーグを見ている人なら誰もが知っているし、正直停滞感を感じることもある。一昨年の終盤頃、膠着した状況を打破するために、あえてCBが中央からドリブルでボールを前に運ぶ、チームとしてCBを前に押し出して数的有利の状況構築を試みる試合があって(http://d.hatena.ne.jp/inuwarabi/20121001/p1)、阿部や永田だけじゃなく坪井もそれをしていたので、明らかに意図した動きだったと思うんですが、それも一時のことで。那須が無理矢理持ち出すとかは去年もあったけど、連携って感じじゃなかったし。今回のFC東京戦での動き方は、槙野がいないことによる応急処置的な側面が強いとはいえ、相手のマークを混乱させるという意味では、使い分けできるようになれば効果的だし、左だけではなく、右でも同じことができるようにして、状況に応じていろいろな選手がいろいろな役割をこなせるようになると、1歩進んだチームになると思うんですよね。ぜひそういう方向性を模索してほしいなぁと思うんですが、ないかなぁ、ないよなぁ。槙野が戻った甲府戦はいつも通りだったしなぁ。どうやってチームを進歩させるか、これは今後も継続的に見ていきたいポイントですね。

 一つ気がかりなのは、ケガから復帰している山田直樹がベンチにも入らなくなっていること。今はケガをしてないと思うんだけど、完全復帰を心待ちにしている人も多いと思う一方で、今のチームだとなかなかに使いどころが難しいかなぁとも思います。総合力の高い選手だと思うけど、何かのスペシャリストではないですからね。2シャドーの位置だと敵DFを背負う場面が多くコンタクトも激しい、ボランチの位置では縦横に広く動ける運動量を生かしにくい。ペトロビッチのスタイルはポゼッション志向ではあるけど割とポジション固定というか。フォメのかみ合わせから守備の穴を見出すスタイルで、動く範囲は比較的限定されるので、山田直樹のあっちこっちに顔出して、ボールタッチにかかわらず味方のプレーに関与していくスタイルを生かしにくいような印象はあります。というか、山田直樹に抱いているこのイメージ自体が幻想なのだろうか。フィンケに適応していたからそう見えただけなのか。日本代表にも入ったわけで、フィンケのスタイルには激ハマリだったのは事実だと思いますが。移籍してでも自分のプレーを最大限生かせるチームを探してほしいと、その才能をこのままうもれさせないでほしいなどとと思ってしまうんですよね。「浦和のために」って選手だとは思うんだけどね、3年前はチームの、そして自身の不甲斐なさに涙を流していた選手ですから。今後どうなるかわからないけど、ピッチを縦横無尽に走り回る姿が見たいんですよねぇ…。