Jの観客動員数をグラフで見てみよう 12シーズン終了ver.

 日本代表vs ラトビア代表。日本の完勝でしたね。前半はちょっと苦労しましたが、相手の足が止まりだした後半は、遠藤・前田の加入効果もありラトビアを圧倒しました。後半勝負で女性人気の高い新戦力大津を投入しての快勝、なんだか批判を黙らせるためのザックの自作自演を疑いたくもなりますがw、ストレスの少ない試合だったのではと思います。

 で、昨年もやったので今年もやってみました。2012シーズンは全40クラブで行われたJリーグ。2002年以降の1試合あたりの平均入場者数をグラフにまとめました。一つにすると非常に見にくいので北から4つに分割。y軸がバラつくのはもうしょうがないですね。



 もちろん減っているクラブもあるのですが、2012は概ね増加傾向。2011シーズンは震災の影響もあり減少傾向だったので、持ち直したといったところでしょうか。全体では前年比で1試合あたり200人ちょっと増加してます。実数で一番伸びたのがFC東京の6,393人。次いで広島の4,518人、鳥栖の4,260人と続きます。FC東京はもともと安定した集客力があり、J2降格に伴って減少、J1昇格で集客が戻ったと。鳥栖は昇格+上位進出の効果で伸びましたね。鳥栖は前年比155%と増加率ではトップ。ベアスタは評価高いみたいですし、スタジアムの魅力も集客増につながっているのかも。広島はJ1昇格の09年をピークに10、11と右肩下がりの中、優勝により集客を大きく伸ばした格好です。8節以降は常に2位以上をキープしての優勝ですから、やはり成績は集客に大きく影響しますね。
 逆に減少数がもっとも大きいのが降格した福岡で4,829人の減少。前年比53%減です。以前調べたときのものですが、J2降格による入場者数減少率は平均約35%ですからだいぶ減らしましたね。
降格するということ - いぬわらび
同じく降格の甲府は14%減、山形は21%減となっています。
 そのほか気になるクラブというと神戸でしょうか。開幕前の期待値が高く1節時点で首位にたったもののその後は振るわず16位でフィニッシュ、降格となりましたが集客は伸びているんですよね。前年比約110%、1,405人増です。札幌も増えたことは増えたのですが、こちらはJ1昇格効果が勝ったと思われるので、J1常連で降格フィニッシュでの集客増は異例な気がします。神戸は昨シーズンも他のクラブが軒並み集客を落とす中で微増しており、07年の昇格以降、09年を除き微増とはいえ常に右肩上がりで集客を伸ばしてきたクラブで、どんな営業を行っているのか非常に興味深いところです。今年の集客がどれだけ踏ん張れるかも気になりますね。
 あと気になるのはJ2常連組みでしょうか。岡山は09年のJ2参入以降、常に成績に比例するように集客も常に右肩上がりで一歩一歩進んでいるイメージ。過去3年振り返ると、常に前年増を更新しているのは、この岡山と鳥栖のみです。水戸・栃木・草津・東京V・横浜FC・町田・富山・岐阜・鳥取・徳島・愛媛・北九州の5000人前後をさまようクラブは、何か起爆剤が欲しいところです、たぶん。
 J開幕まで1ヵ月を切りました。浦和レッズの開幕戦は昨年のチャンピオン広島。2年連続とか日程くん(というかJリーグ運営)も悪ふざけが過ぎる気もしますが、今年はACLもあり、戦力補強も十分。昨年からどんな進化を見せてくれるのか、楽しみに開幕を待ちたいと思います。

ラトビア戦を前に

 本日は日本代表VSラトビアFIFAランキング104位のラトビアに対し、海外組を中心にレギュラーフル召集、新戦力は大津のみということで、成績を見れば順風満帆なはずなのに、方々で批判を受けているザックジャパンの2013年ファーストマッチ。
 「国内組を召集して新戦力の発掘を!」「海外組はリーグに集中させろよ!」「104位のラトビアと試合をする意味あるの?」などなどの批判が繰り広げられているようですが、個人的には不満なし。というのもこれまでのザックの言動や召集方法などを見ていれば、今回の試合の位置づけは“強化試合”ではなく“調整試合”だと思うのです。さすがにそんなことを監督も原さんも公言するわけないですけど。
パスワークが武器の日本代表に対し、選手たちが所属する各チームの戦術はさまざま。特に海外組の場合は、ポジション固定でリスク管理を重視するチームもあれば、ロングボールで中盤をすっ飛ばすチームもあり、日本代表が志向するサッカーとは大きくかけ離れたチームでプレーをしている選手がほとんどであり、当然所属チームと日本代表では求められる役割もプレーの質、プライオリティも異なってくるわけで。本戦進出がかかったヨルダン戦のまえにテストマッチが組まれているとはいえ、このラトビア戦を逃せば5ヶ月以上のブランクが出来てしまう。その前にしっかり日本代表のサッカーを思い出してね、というのがラトビア戦の位置づけ。
 なので、この試合で大事なのは選手たちが実践を通して日本代表のサッカーを復習することであり大勝することではないのです。格下相手に大差がつかなければさらに批判が広がりそうな気もしますが、海外組は今週末にも試合があるし、CL・EL組はミッドウィークにも試合を控えており、厳しいスケジュールの中でフルスロットルの試合をする必要もなし。大事なのはスコアではなく、選手たちがプレー意図を合わせられるかどうかなんです。だから強いチームとやる必要はないし、むしろ強豪であればリアクションに回る時間も多くなり、本来の目的である“日本代表のサッカー感を取り戻す”作業に専念できなくなり、疲労の蓄積も大きくなります。ということで、失礼な話ではありますが、手頃な相手としてラトビアがマッチングされたのでしょう、たぶん。
 新戦力を求める声についてはわからなくはないんですが、そこはタイミングだったり、代表のサッカーとの愛称もありますからね。Jリーグが開幕してから新しい選手たちの台頭を期待しましょう。
 さて、そういう意味ではラトビア戦は結果よりも内容、というか選手間の意志の疎通が求められる試合だと思うので、ザックジャパンの戦術を改めて分析する上では絶好の機会なのかもしれないですね。

5年ぶりのACL

Jリーグ2012シーズンが終了した。最終節、浦和は名古屋に完封勝利。上位にいた鳥栖・柏がそろって負けたことで5年振りのACL出場が決定しました。3位という好成績に加えて、最終節の勝利が久しぶりということもあり、昨年と比べて非常に満足度の高いシーズンだったわけですが、正直なところ試合前は「ACLは出なくてもいいかなぁ」と思っておりました。
 というのも07年のACL優勝までの道のりは激動であったし、今の浦和にあのトーナメントを勝ち抜くだけの力はないと思っているからです。選手層という意味でも、クラブの一体感という意味でもですね。07年当時の浦和は「ACLを絶対に獲る」という方向でクラブがまとまっていた気がします。国内タイトルを全て取り、Jリーグ盟主の座を確定させるためにも、JクラブによるACL初制覇は浦和の手で、という熱意がクラブにはあったし、06年はACL未出場でしたが参加しているJクラブのアウェー遠征に浦和のスタッフも同行して現地調査などをしていたと記憶しています。それくらいACLに対して熱を入れていましたよね。
 で、今年はどうかというと昨年の大低迷の影響でACLの準備どころじゃなかったはずだし、そもそもACL出場権を視野に入れていたかどうかも怪しいところ。とにかく結果が残せそうな監督に片っ端から声をかけてペトロビッチ就任で結果オーライという、一貫性も何もないクラブ運営が行われているわけで、選手や監督をどれだけバックアップできるか、非常に心許ないのが現状だと思います。
 戦力的に見ても、鈴木や阿部、坪井といったACL制覇経験者がいるものの、他の面々は非常にナイーブというか。韓国・中国勢の反則まがいのコンタクトを跳ね返せるほどのメンタルがあるとは思えず、07年時は堅守とワシントンという、確実に計算できる拠り所が会ったのに対し、今は攻守に“チーム”で一丸となっている印象はあるけど、確実に計算できる“武器”がない印象ですね。どんな形であれ、その“武器”が見つかったらJリーグでも優勝争いに本格的に名乗りを上げられるのではないかと思いますが。
 というわけで、現状のままでは来期のACLを勝ち抜くのは非常に厳しいと思っております。ACLともなれば当然遠征になるわけで、過密日程の影響は避け難く、Jリーグの成績に影響が出ることも考えられる。仮にACLで決勝まで進んだとすれば、Jリーグの成績が低迷したとしても非難する声は小さいかもしれない。でもACLで予選敗退、Jリーグでも低迷ともなれば、サポーターから非難の声が上がることは容易に想像できるわけで。フロントがビジョンを持たない以上、サポーターの声に敏感に反応して監督を…なんてことも想像できちゃうわけです。
 そういうわけなのでACLは“まだ”いいなぁなんて思っておりましたら、見事出場権獲得。出場するからにはしっかり応援したいし、07年のあの高揚感をもう一度と味わいたいと思ってしまうんですよね。でも目先の勝利だけを求めていては08〜11年の失敗(個人的にフィンケは失敗だと思ってませんが)を繰り返してしまう可能性もある。そういうことを考えても来年のACLは非常に難しい位置づけになりそうですが、逆に考えれば、これはクラブとして成長するチャンスなのかもしれません。JリーグACL、そしてチームの長期的な強化。どれか一つではなくこれら全ても突き詰めて行く姿勢をフロントには求めたいところ。来シーズンが難しいシーズンになることが予想できる以上、このオフシーズンにフロントがどんな動きを見せるのか、注目して行きたいけどめっちゃ不安です…笑。

プランBはまだ要らない

 Jリーグ第27節、浦和は柏と対戦。前節のG大阪戦、ホームでの0-5というショッキングな敗戦から切り替えるためにも大事な試合だったわけですが、ポポの劇的なロスタイム逆転弾で見事勝利。優勝戦線に踏み止まることができました。
 昨シーズンと比べ、非常に有意義なシーズンとなっている今期には非常に満足しているし、ここまで立て直したペトロビッチ監督の手腕には脱帽ものなのですが、一方で今の浦和の戦い方、守備時は5バック、攻撃時は5トップという特殊なやり方に対する懸念みたいなものを6月くらいから実は抱いていました。というのもあまりに型にハマり過ぎていると感じていたからです。今のやり方は相手チームとのフォメのかみ合わせのギャップを利用してマークのズレを生み出し、そのスキを突いてゴールを奪うことを目的としています。前の3人は比較的自由に入れ替わりながら動いてボールを受けるのですが、他の選手に関しては基本的に約束事の範疇の中での動きに限られており、動く範囲を限定することで守備時のリスクマネジメントをしているわけです。
 で、今年の浦和、特にシーズン折り返し辺りから顕著なのですが、前半に試合の主導権を握り、後半は逆に受身になってしまう試合が目に付きます。要は浦和の特殊なフォメに相手が対応しきれない前半に主導権を握り、後半になると対応されてしまい相手に主導権を渡してしまう試合が多いのです。後半になると運動量が落ちるってのもあると思いますが、前半はサイドを有効に使えていたのに、後半になると攻め手がないって試合が多いんです。というのもあって、対応された場合は攻撃時の4-1-5のような布陣に固執せずに別のやり方を模索したほうが良いのではないかと前々から思っておりました。プランBってやつですね。現代サッカーはバルサを筆頭にパスでボールを動かしてギャップを作るサッカーで、浦和もパスやポジションチェンジで相手守備網にギャップを作り、そこから崩して行くやり方も取り入れたらどうだろうか、と。柏木というパスで変化をつけられるタレントもいるしね。
 そんなわけでG大阪戦の大敗を受けて、やはりプランBは必要だろうと改めて思ったわけです。G大阪は浦和の最終ラインにプレッシャーを掛けてボールをサイドへ誘導し攻撃を遮断、あるいは何とかプレスをいなしてタテにクサビのパスを入れてもそこでしっかりと潰すという、完璧な浦和対策をやってきました。にも関わらず、浦和はいつまでたっても同じことの繰り返し。マイボール時に阿部が最終ラインに降りて、ワイドが上がって4-1-5。阿部と永田がプレスに苦しめられて効果的な配給が出来ず、槙野や坪井がサイドでボールをもらっても出しどころがなくて苦しんでいるのであれば、阿部は下がらずに最終ラインは槙野・永田・坪井でパスを回して、鈴木と阿部が中盤で動いて最終ラインからのパスの選択肢を増やしてもいいのに。タテパスが潰されるのであれば、一度中盤でボールを保持してから裏抜けする動きなどでチャンスをうかがえばいいのに。G大阪戦はそんなことを考えながら見ていたわけです。やはりプランBの準備もするべきでは、と。
 そして迎えた柏戦。前節が大敗だっただけに、何か+αが見えるかなぁとけっこう楽しみにしておりました。で、しっかりと+αが見えたんですよね、プランBではなく、今のやり方を一歩進めるやり方として。それが最終ラインからのドリブルでの持ち上がりです。DFが中央からドリブルでボールを前に運ぶことで、守備ブロックを構築しているボランチを引っ張り出し、ブロックに穴を開けるってやり方ですね。これまでも永田や阿部は、ボールを持ったときにプレスが緩いとドリブルでするするっとボールを前に運ぶプレーを時々見せていましたが、それはあくまでもボールホルダーである永田や阿部個人の判断だったと思います。ところが柏戦では明らかにチームとしてその形を意識していました。ボールホルダー個人の判断ではなく、パスの出し手がそこまで考えてパスを出すシーンが何度かあって、明らかにチームとして意識しているのが伝わってきました。坪井ですらドリブルでボールを運んでいましたからね。通常、敵の前プレに追い込まれると安全策としてタテに放り込むか、GKやボールホルダーの横〜後方に下がったDFにパスを出して逃げますが、このやり方ではDFが後方のフォローに入るのではなく、敢えて前に出ることでパスコースを作りプレスをいなし、かつチャンスを広げることを目的としています。リスクの伴うプレーだし、状況に応じた判断が必要ですが、今のサッカーを確実に一歩前に進める方法ではないかと思います。
 僕自身、今のやり方は型にはまり過ぎており、いずれ閉塞してしまうのではという危惧からプランBの用意もした方がいいのではと思っていたわけですが、今の特殊な戦術にもまだまだ伸び代はあるんですよね。つまり、まだプランBは要らないんです。今はプランAの完成度を高めることの方が重要で、プランBどうこうを言う時期ではないというペトロビッチの心の声が聞こえてくるような柏戦でした。ペトロビッチ監督がどんな完成図を描いているかは分かりませんが、監督の契約延長も発表されたわけですし、優勝争いはもちろん、戦術の熟成も含めてこれからの浦和がますます楽しみですね。

ザックのプライオリティ

 ワールドカップアジア最終予選、日本代表はイラクに1-0で勝利し、勝点10でぶっちぎりの1位。アウェー3戦を残しているとはいえ、本戦進出が濃厚となってきたわけですが、セルジオをはじめ、ネット界隈でちらほらとメンバー固定化に対する不満が出てきているようです。個人的には問題ないと思っているんですけどね。
 というのも、これまでの言動・采配を通して、チーム強化におけるプライオリティがはっきりしている気がするんですよね。たぶんプライオリティのベースはこんな感じ。
1 最短での次ステージ進出
2 チームの成熟
3 戦力の底上げ
 極めて常識的なプライオリティだと思います。現在は1と2は同時進行で行っているところ。日本代表のサッカーは複数の人間が絡む連携をベースにしており、オフ・ザ・ボールと選手の距離感、タテに入れるショートパスのタイミングなんかを重視してますよね。ザックはそこにノイズが入るのを非常に嫌う節があります。つまり、選手たちが所属クラブでのプレイを通して、日本代表に必要なゲーム感と乖離してしまうことを嫌がっているわけです。クラブではチームの連携よりも個々の1対1の局面を重視するチームや、ポジションチェンジ非推奨のチームもありますからね。だから8月のベネズエラ戦もイラク戦前のUAE戦も、日本代表でのゲーム感覚を取り戻すための調整を最優先しました。もうちょっと前までさかのぼると、3次予選最後のウズベキスタン戦では、すでに予選突破を決めているのだから国内組みを起用するべき、見たいな論調もあったと思いますが、この試合を逃すと海外組は半年間代表でのプレーがなくなってしまうので、少ない機会を逃すまいと海外組もばっちり起用してましたね。
 で、今話題になっているのは3の部分。新戦力をテストすべきという論調です。宮市をはじめ合宿に呼んでも使われない選手は少なくなく、スターを欲するメディアや一部のファンはフラストレーションを抱えていそうですが、ザックはノイズが入るのを嫌うので、現在の日本代表のサッカーを理解し体現できる選手しか起用しない方針に見えます。つまり、使われない宮市や原口は、トレーニングの段階でも代表のサッカーに対する理解と技術が足りてないってことなんだと思います。逆に清武はそれができたので呼ばれてすぐに起用されて、ぴったりフィットしましたよね。まずは理解と体現。それができて初めて戦力と認識され、レギュラー争いに名乗りを上げることが許されるのだと思います。ただ継続して呼ばれる選手は、その才能は評価されているということなので、ぜひともその期待に応えて欲しいところですね。
 また、実際に新戦力をテストする段階でも、これは当たり前のことなのですが、個人の技量ではなく、現在の代表のスタイルにプラスアルファをもたらすことができるかが見られるわけで、複数のレギュラー選手をはずしてチーム力を落とした状態で新戦力を試しても意味がありません。テストは戦力の底上げが目的であって、ベストメンバーの選手たちと合わせて何が出来るかを見たいわけですから。だから1トップにハーフナー、2列目に宮市・大津・原口なんて並びのテストは、余程の事情がない限りやらないと思います、たぶん。もちろんザックも新戦力の発掘を考えていないわけではなく、まずは予選突破が最優先。今の状況なら最終予選の2試合はテストに使えそうなので、新戦力テスト推奨派もそこまでは我慢かもしれません。
 要するに、注目選手が出てきても、現在のベースを壊してでも起用する価値のある選手でもない限り、やみくもに起用するようなテストはしないってことです。これまでの言動・起用方法を見る限り、ザックにとって大事なのは個の技術よりもチームとしての錬度ということなんだと思います。もちろんJリーグに頻繁に足を運び、その才能を買っている選手は試合で起用しなかったとしても継続的に召集しており、「俺は見ているぞ」っていうメッセージを選手に伝えているわけで、選手たちもそれを理解しているはずです。
 まぁ、これで結果が出てなかったら僕も「新戦力出せよー」ってぼやいていたと思いますが、上手くいってるしね。ジーコや岡ちゃんの時のような閉塞感はないし、すばらしい監督に恵まれたのではないかと思います。なんだか信者っぽいですが笑。
 ただ10月のヨーロッパ遠征のブラジル・フランス戦以後どうなるかってのはちょっと気がかりではあります。おそらくは現在の日本代表と列強との距離を測るためのゲームになると思いますが、良い勝負ができれば今のスタイルを続けると思いますし、負けたとしても修正ポイント・強化ポイントをあぶりだし次につなげるはずです。ただし、そういう次元ですらなく圧倒的に負けてしまった場合、現在のスタイルを180度転換することもありえるのだろうかってこと。もちろん、そうならないことを願っているし、今の代表ならそこそこ闘えるとは思うんだけど、圧倒的な個人技の前に…ってことは十分にありえるからね。いずれにしても10月の試合がのし身ですね。

おつかれ、ヤングなでしこ

 オリンピックの余韻が覚めやらぬ中開催されたU-20女子ワールドカップアメリカの優勝で幕を閉じました。まずはワールドカップとはいえアンダー世代、しかも女子の試合をゴールデンタイムに生中継したフジテレビの勇気に拍手をしたい気分です。ブンデス目当てでフジのCS3局も契約しているので、個人的には地上派ではなくても良かったのですが、日本戦全試合地上派という決断があったからこその盛り上がりだったと思います。選手紹介テロップに「○○の後継者」と入れたり、カメラのスイッチのタイミングがずさんだったりと不満もありますが、「ゴールデンタイムにアンダー世代の女子サッカーを放送」するという英断は、サッカーの盛り上げに間違いなく一役買ったのではないでしょうか。CSでは日本戦以外も放送していて、フリーの下田アナなんかも実況してました。下田さんには地上派で中継してもらいたいけど、フリーの人には厳しいか。個人的に下田さんの実況は好きです。
 さて、ヤングなでしこ。3位という素晴らしい成績を残したわけですが、ドイツ戦は残念でしたね。それまでの快進撃がかすむほどの完敗。ドイツの圧倒的なフィジカルの前にしり込みしてしまい、前半途中までは勝負になりませんでしたね。彼女たちにとって初体験となるフィジカルの差はそれほどまでに大きかったということです。それでも何人かの選手は前半の途中からしっかりと切り替えて、怖がらずに体をぶつけられるようになったし、後半からはほとんどの選手がそれをできるようになりました。3決のナイジェリア戦でも、ドイツ戦の反省を活かし、フィジカルコンタクトでは勝てなくても、しっかりと体をぶつけ、相手のプレーチョイスの選択肢を減らし、近くの選手がカバーに入る、という連携がしっかりできていました。この状態でもう一度ドイツと勝負させてあげたいなぁと思っていたら、ドイツ対アメリカの決勝戦は、もう1ランクくらいレベルが上の試合になっちゃいましたね。この2強に喰らいつくためにも、所属チームで経験を積むことが大事だと思いますが、あのフィジカルは日本だと体験できないんだよねぇ。国際大会へのチャレンジはA代表しかないし、U-22くらいの大会の創設とか難しいんだろうか。なんとか調整して経験積ませてあげたいなぁ。
 選手個人にスポットを当てるなら、個人的にはキャプテンの藤田選手が良かった。チームが苦しい時に顔を出すというか。ドイツ戦でも最初に闘う姿勢を見せたのは藤田で、守備時に体を張るのはもちろん、ドリブルでファウルをもらってチームを落ち着かせたりと、派手さはないけどキャプテンらしさを見せてくれました。猶本のようにプレスをいなしてタテにつけるようなパスは少ないけど、ボランチとして確実にボールを散らすプレーはできるし、守備時のカバーリングも戦う姿勢も◎。今後は、あのサイズでどこまでできるかでしょうか。サイズがあれば良いって分けじゃないけど、フィジカルコンタクトが欠かせないサッカーにおいてサイズは勝敗を分ける重要な要素でもある。そのハンディキャップをいかに克服して行くのか。その辺りにも注目です。

Jリーグの経験を力に変えて

 オリンピック準決勝、メキシコ戦。残念ながら男女同時優勝という偉業の可能性は消えてしまいましたが、まだ3位決定戦が残っています。しっかり切り替えて是が非でもメダルを持ち帰って欲しいところ。…でもね、正直厳しいかなぁと思ってしまうのです。
 大会前の大方の予想を覆し快進撃を続けたU-23代表ですが、その要因は守備の安定とカウンターでした。特に多くのサッカーファン・評論家が読み間違えたのが守備の安定ですね。トゥーロンでの惨敗を受けOAに吉田・徳永を加えたとはいえ、これほど効果的な守備組織を短期間で作り上げることができるとはほとんどの人が思っていなかったのではないでしょうか。初戦がスペインだったこともあり、「まずは守備から」という意識で大会に入ったことで、前線のタレントが守備に走り回り、コンパクトなブロックでPAへの侵入を許さず、ハイボールもしっかりと跳ね返す、というプランをチーム全員で実行できたこと。しかもスペインから勝利をもぎ取ったことで得た成功体験が、今大会におけるチームの方針を固めたといえるのではないでしょうか。
 で、今回のU-23の前評判が低かった理由は守備の危うさのほかにもう一つありました。攻撃時のバリエーションの少なさ、というか自分たちがボールを持ったときに効果的な攻撃が仕掛けられないってことです。ボールを持たされると得点の気配がしないチームだったんですよね。幸いなことにエジプト戦までは、それが顕在化することはありませんでした。4試合中2試合はカウンターで早い時間に先制点が入ってたし、ホンジュラス戦は前線入れ替えてたというエクスキューズも合ったしね。唯一モロッコ戦が怪しかったわけですが、終盤のスーパーカウンターで勝っちゃったからね。ところがメキシコがリードを奪ったことにより守備重視の戦い方になったため、日本がボールを持たされることになり、今まで隠れていた攻撃バリエーションのなさという弱みが噴出してしまったという格好です。“どうやって相手守備を崩すか”という意思統一が図れていないわけです。
 これは予選の頃から言われていたことで、大会直前の壮行試合・準備試合でもその傾向は変わりませんでした。実際、今大会では遅攻で相手のPAに侵入したのは右サイドから2、3回程度サイドを抉っただけだと思います。シュートもPA外からが多かったですね。とにかくタテに速い攻撃をしたがるチームで、今考えれば関塚監督はその攻め方以外考えていなかったのかもしれませんね。確かにそれで川崎Fで成功を収めてはいますけど。前で納められる大迫を選考しなかったのも、本大会では速攻1本に掛けていたからなのかもしれません。ただ、交代で入った3選手がまったく機能しなかったことも含めて、もう少し準備はしておくべきだったかなぁと、どうしても思ってしまいます。もちろん中2日での5戦目ということで選手の疲労もあっただろうし、日本の選手たちの動きが重かったというエクスキューズはありますが、とても残念な敗戦でした。
 で、3位決定戦ですよ。相手は韓国。ぶっちゃけ1試合も見てないんですが、韓国がボールをキープするサッカーをするとは思えない。どう考えたって日本がボールを持たされる展開になると思うのです。準決勝で3失点したとはいえ、そこまでの4戦で2失点。決して守備が弱いチームではありません。日本代表は当然のように苦戦が予想されるわけですが、たとえ攻撃時のコンビネーションが未成熟であったとしても、彼らはJリーグにおいてさまざまなシチュエーションを見て、経験してきた選手たちです。Jリーガーとしての経験地をフル動員して、勝利に結び付けて欲しいと思います。